それは、病院の待合室。
チェコのそれは、待合室というより待合廊下。
チェコの一般的な診療所や婦人科、歯医者などのクリニックには
日本のように受付などはありません。(総合病院など大きいところにはあります)
診察室の前の廊下で無言で待つというのが一般的です。
私は初めての経験がBrnoにいた時、
雑居ビルのような所に入っている一般診療所に行きました。
予約したお医者さんの名前が書いてあるドアを見つけて
扉を叩くと、看護婦さんのような人が出てきて
(多分)「そこで座って待ってて」とチェコ語で言われました。
本当にそういわれたかは知らないけど、古く暗い廊下にある椅子で待つことにしました。
その頃は外国の病院のシステムも知らず、チェコ語力もゼロで
本当に私は呼ばれるのだろうか?とこの状況が不安でした。

ぽつん。
20分くらい待って、やっと呼ばれました。
やっとお医者さんに会えたら、安心しました。
それから年月が経ち、プラハのクリニックでも変わらずドアをノックして
名乗ってから順番を待っていました。
待合室に他の患者さんがいてもいなくても。
するとだいたい出てきた看護婦さんがちょっと怒り気味なんですね。
そして最近、少しチェコ語に反応できるようになり
ドアの貼紙に初めて気がつきました。

「ノックはしないでください。看護婦が来ます。」
と書いてあります。
ここの婦人科でいつもノックしてたことが申し訳なくなりました。
チェコの看護婦さんは、忙しいです。
見ていると、日本の病院でいう受付の仕事と看護婦の仕事両方を一人でこなしています。
看護婦さんの出れるタイミングで出てくるのを、気長に待たなくてはいけなかったのですね。
それからはもうノックをしないで待つことを覚えたのですが
最近初めて行った近所の診療所の待合廊下でまたも不安が訪れました。
やはりそこのドアにも
「ノックはしないでください。看護婦が来ます。」と書かれていました。
この診療所は新しくできたばかりで患者さんもまだ少ない様子。
ぽつんと一人座って待つ。

「私いますよ〜患者一人やって来ました〜」と心の中で
部屋にいるであろう看護婦さんに話しかける。
やはり、落ち着きません。
そこで中に看護婦さんやお医者さんがいるか確かめたくて、ドアに耳をくっつけてみました。

「ああ、だいじょうぶだ。何か人の声がちゃんとする。」
とホッとした その拍子


患者と看護婦さんが突然出てきました。
慌ててダッシュしてしまったことで
私、最強に怪しい。
真顔の看護婦さんが私のところにやってきて
「どうしましたか?」と聞きました。
何もなかったことにして
診察受けたい事を伝え保険証を渡しました。
とりあえず待合と看護婦さんの関門を越えました。
私の通うところの看護婦はチェコ語でもドクターは英語ができるので
その後は大丈夫なのです。
最近、そんな一般的なチェコのクリニックとは違う待合室を体験しました。
プラハ1区にある歯医者さんです。
歯医者をネットで探してて、ここが良さそうだと思ったので電話をかけました。
彼氏が最近行ってる歯医者がよくないと言っていたので、彼もここで見てもらえるか二人分お願いしました。
電話中彼は横にいたのでチェコ語で予約してもらった方が早いと思うけれど、
私が通える病院か判断するために自分でしました。
電話をした日に診てもらえることに。
到着すると、そこはいつも行くようなクリニックとは大違い。
ちゃんと受付がいて、ソファーがあり、日本の待合室のような感じです。
待っている患者が多かったけれど、ロシア人ばっかりだということに彼が気がつきました。
さて診察は彼から。

20分後、診察から戻ってきた彼は
私の番が来てしまう前に、早口でどんな歯医者だったか私に説明しました。
「医者に勧められた被せ物が驚く程高いものしかなく、一つの詰め物が2000コルン(1万円)とかあり得ない。聞いたら保険料でまかなえる物を置いてさえいない!そんな歯医者初めて。お金儲けをしたいだけなのが見え見え、だから金持ちのロシア人ばかりなんだここ。ここの歯医者僕は通うつもりはない。」
とのことだった。
え・・まじ・・
とうろたえてる所で順番を呼ばれた。
歯のレントゲンやその他器具はとても新しく
若い女の歯医者さんの診察はとても適切なことを言われ、技術はあるように感じた。
ある程度説明された後、治療についての話に。
私は治療した方がいい歯が小さいもの大きいもの合わせて3、4本あるようで
だいたいどのくらいの値段がかかるか教えてくれました。
しかしその値段が彼の言っていたものよりさらに高く、
「ここの歯にはクラウンが必要で5000コルン(2万5千円)、ここの治療には3回ほどの通院が必要で毎回1000コルン(5000円)ほどかかる可能性があります、保険は利かないものになるでしょう・・ナドナド」
と続けました。保険が利かないとなると本当に高い。
給料が全部歯医者代に飛んでいきそうです。
この値段は、チェコ人の給料でははっきりいって無理なのです。
「ここで治療してもらうかは考えさせてください」と伝えました。
すると「治療を決める場合は1時間半以内に当院に知らせて予約をとってください」と
最後に謎の事を言われました。
彼とトボトボ歯医者を後にしました。
さすがプラハ1区(中心街)だね・・確実に外国人向けの歯医者だ、と彼。
彼はやはり前の歯医者に戻ると決めました(今思えば悪くない、と)。
私も他の歯医者を探すことにしました。
半年以内に他の歯医者に移る場合、登録解除料500コルン(2500円)がかかるんですけどね、イタイイタイ。
経験になりました。
この歯医者の診察中に、面白いこともありました。
歯医者さんが私の歯を診察している時
「Krásné Krásné」(美しい)と何度も何度も言うのですね
私の歯がきれいな筈がないのでナヌ??って感じだったのですが
ついには歯医者さんが他の看護婦さんまで呼んで、私の歯を見せて何か説明してるんです
そしてKrásnéを連呼。
一旦落ち着いたあと、歯医者さんが英語で
「あなたの被せ物の銀歯があまりにも美しかったので・・」
と言いました。そして、これは日本でやったの?いつごろに入れたもの?とか興味を持って聞いてきました。
私の日本の歯医者さんは一般的な銀歯を使っただけだと思うのですが、
もしかしたらチェコではかなり質の高いものになるのかも・・
やるな日本の銀歯!と人生で初めて詰め物を誇らしく思いました。